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業務災害の認定と通勤災害の認定

通勤災害の認定

 通勤とは、労働者が住居から会社への出勤、また、会社から住居への退勤をいいます。通勤途上の災害は、本来業務上の災害とはいえませんが、全くの私的行為ともいえないことから、業務との関連性に着目して通勤災害保護制度が創設されました。この制度により通勤災害は労働災害と同様に、保険事故として取り扱われ、業務災害に準じて保険給付が行われます。それゆえ、業務との関連性に着目して「通勤」の定義が設けられています。

1.業務災害と通勤災害との差異

 労災保険では業務災害と通勤災害が保険給付の対象とされ、これらの災害に対しては、同じ程度の保護を与えています。しかし、業務災害と通勤災害とは、その成り立ちから別個のものとして構成されています。

 業務災害は、労働者が労働契約に基づいて、事業主の支配・管理下にある状態で業務に起因して生じた災害であり、労働基準法により事業主に災害補償責任が課せられています。

 一方、通勤災害は、労働提供のために事業主の定める場所と住居との間を往復する途中で被った災害であり、まだ事業主の支配・管理下に入ったものではありません。したがって労働基準法では、事業主に対して、災害補償責任が課せられていないものです。

 労災保険の保険料は通勤災害の保護に要する分も含めて全額事業主負担ですが、通勤災害は事業主の支配・管理下で発生したものではないので労働者も費用の一部を負担するのが公平であるとの考え方から、被災労働者から一部負担金を徴収することとされています。

2.通勤についての定義

 通勤について、次のように規定されています。

 「通勤」とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとされていますが、労働者が、移動の経路を* 逸脱し、又は移動を* 中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は通勤とはされません。ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き通勤とされます。

(1)

住居と就業の場所との間の往復 

(2)

厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動(複数就業者の事業場間の移動を指す。)

(3)

(1)に掲げる往復に先行し、又は後続する移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)(単身赴任者の赴任先住居と帰省先住居の間の移動を指す。)
「就業に関し」の意義

 「就業に関し」とは、移動が業務と密接な関連をもって行われるものであること、すなわち業務に従事するため又は業務を終えた後に行われるものであること、という趣旨です。

 往復行為が就業と関連しているかどうかについて、特に問題になりやすいのは、退勤の場合です。

 例えば、業務の終了後、事業場施設内でスポーツ、サークル活動等をした後に帰途につくような場合ですが、このような活動を長時間にわたって行うなど、就業と帰宅との直接的関連性を失わせるような事情がない限りは就業との関連性が認められるのが通常です。

「住居」及び「就業の場所」の意義

ア.住居とは、労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の就業のための拠点となるところです。

 したがって、交通ストライキ等の交通事情その他やむを得ない事由で一時的に居住の場所を移している場合、その場所は住居と認められますが、友人宅で麻雀をし翌朝そこから直接出勤する場合等は、その友人宅は就業の拠点となっているのではないので住居とは認められません。

 また、単身赴任者等が週末等に就業の場所から家族の住む家屋(以下「自宅」といいます。)へ帰り、週始め等に自宅から就業の場所へ出勤する場合(「週末帰宅型通勤」といいます。)についても、一定の場合は当該自宅は住居と認められます。

イ.就業の場所とは、業務を開始し又は終了する場所をいいます。

 就業の場所は、原則として、労働者が本来の業務を行う場所ですが、物品を得意先に届けてその届け先から直接帰宅するような場合は、その物品の届け先が就業の場所となります。

また、

(a) 複数就業者の事業場間移動の起点たる就業の場所とは、労災保険の適用事業に係る就業の場所、特別加入者に係る就業の場所等とされています。
(b) 単身赴任者の赴任先住居と帰省先住居の間の移動の要件は、配偶者と別居した場合、配偶者がない場合において18歳到達年度末までにある子と別居した場合及び配偶者も子もない場合において同居介護していた要介護状態にある父母又は親族と別居することになった場合等となっています。
「合理的な経路及び方法」の意義

 合理的な経路及び方法とは、労働者が先に掲げた移動(13)を行う場合に、一般に用いると認められる経路及び手段等をいいます。

 合理的な経路及び方法は必ずしも1つに限定されるものではありません。

 例えば、勤務先に届出た経路及び方法は一般的に合理的な経路及び方法と認められますが、それ以外は認められないということではありません。

 道路工事や交通事情等により迂回した場合は合理的経路と認められ、また公共交通機関、自動車、自転車、徒歩等通常用いられる方法は一般的に合理的な方法と認められます。

 しかし、特段の合理的な理由もなく著しく遠回りとなる経路をとる、運転免許を有しないのに自動車で通勤する等は、合理的な経路・方法とは認められません。

「逸脱」と「中断」

 通勤とは、就業に関し、先に掲げた移動(13)を合理的な経路及び方法で行う行為ですが、時として逸脱したり中断することがあります。

 逸脱とは、通勤の途中で就業や通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれることをいい、中断とは、通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うことをいいます。

 具体的には、通勤の途中で映画館に入る場合、バーで飲酒する場合などをいいます。

 しかし、通勤の途中において、経路近くの公衆便所を使用する場合や経路上の店でタバコ、雑誌を購入する場合などささいな行為を行う場合には、逸脱、中断には当たらないとされています。

 通勤の途中で逸脱又は中断があるとその後は原則として通勤とはされませんが、これについては例外が設けられ、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は再び通勤とされます。

 日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものは、次のとおりとされています。

ア. 日用品の購入その他これに準ずる行為
イ. 職業能力開発促進法第15条の6第3項に規定する公共職業能力開発施設において行われる職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
ウ. 選挙権の行使その他これに準ずる行為
エ. 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
オ. 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行なわれるものに限る。)
3.通勤と疾病との間の因果関係

 通勤災害とされるためには、通勤と疾病との間に相当因果関係のあること、つまり通勤に通常伴う危険が具体化したものであることが認められなければなりません。

 通勤による疾病の範囲については、通勤による負傷に起因する疾病、その他通勤に起因することの明らかな疾病とするとされています。通勤による負傷に起因する疾病とは、自動車事故による慢性硬膜下出血などをいい、通勤に起因することの明らかな疾病とは、転倒したタンクローリーから流れ出す有害物質により急性中毒にかかった場合などをいいますが、この場合にも相当因果関係の有無によって通勤災害となるかどうかが判断されることになります。