労災保険に関する情報の提供を行うとともに、各種支援を行っております。

労災認定事例 通勤災害(1)妻を送迎中の事故

労災の認定やその事例についてご紹介します。

 

質 問

(1) 共働きの妻を送り迂回して出勤したが

 通勤災害の問題についてお尋ねします。弊社の従業員に共働きの者がいます。彼の妻の勤務場所は、その者の自宅からみると、弊社を通り越して1キロメートルほど先になります。

 ところで先日、その者が妻を勤務先まで送り届けて自分も出勤するため車を走らせている途中、自動車事故を起こしてけがをしました。普通の経路なら、当然通勤災害保護制度の適用があると思いますが、この場合回り道をしているだけに制度が適用されるかどうか疑問に思っています。この点は、どのように判断されますか。

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回 答

迂回距離短く合理的経路からの逸脱ではない

 通勤災害保護制度は、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路および方法により往復する途中において被った負傷などに対し救済しようというものです。したがって、通勤災害と認められるための通勤とは、「合理的な経路および方法」によったものでなければなりません。

 そこで、「合理的な経路および方法」とはどのようなものかが問題になりますが、これに関しては「経路に限っていえば、乗車定期券に表示され、あるいは会社に届け出ているような鉄道、バス等の通常利用する経路及び通常これに代替することが考えられる経路等が合理的な経路となる」(昭48・11・22基発第644号)とされており、また合理的な方法については「鉄道、バス等の公共交通機関を利用し、自動車、自転車等を本来の用法に従って使用する場合、徒歩の場合等、通常用いられる交通方法は、当該労働者が平常用いているか否かにかかわらず一般に合理的な方法と認められる」(同上)とされています。

 したがって、お尋ねのケースについては、自分の通勤だけでなく妻を同乗させ回り道をしているわけですが、これが「合理的な経路」に当たるかどうかが問題になります。これに関して、厚生労働省および労働保険審査会の認定例をみますと、類似のものがあります。

 最初の事例は、マイカー通勤の労働者が同一方向にある450メートル離れた妻の勤務先を経由する経路上の災害で、2番目は同じく3キロメートル離れた妻の勤務先を経由する経路上の災害であり、3番目の事例は合理的通勤経路から約4キロメートル離れた妻の勤務先に妊娠8か月の妻をマイカーで送り、その後自分の勤務先に向かう途中の災害です。

 最初の事例について厚生労働省は、「マイカー通勤の共働きの労働者で、勤務先が同一方向にあって、しかも夫の通勤経路から、さほど離れていなければ、2人の通勤をマイカーの相乗りで行い、妻の勤務先を経由することは通常行われることであり、このような場合は、合理的な経路として取り扱うのが妥当である」(昭49・3・4基収第289号)としています。しかし、2番目の事例については、「妻の勤務先が同一方向にあるが、迂回する距離が3キロメートルと離れており、著しく距離が遠まわりと認められ、これを合理的な経路として取り扱うことは困難」(昭49・8・28基収第2169号)としています。さらに、第3の事例について労働保険審査会は、妻は妊娠8か月の身重の状態であり、バスに乗るにも十分に注意しなければならなかった時期であったことを勘案すると、被災当日、前記の最短の通勤経路から多少離れて妻をその勤務先まで送ったことは、やむを得ない必要な行為であった」(労第130号、昭51・10・30裁決)として、合理的な通勤経路から逸脱または中断したものとして取り扱うことは妥当ではない、と判断しています。

 お尋ねの件については、マイカーで相乗りしない場合は、どのような通勤手段をとらなければならないか、その場合の便・不便はどうかといった細かなことが分かりませんが、上記の例などに照らして考えると、共働きであることや迂回距離もさほど著しいとは思えない点からして、合理的な通勤経路から逸脱しているとは思われません。したがって、通勤災害として認定される可能性が大きいといえましょう。

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